ホイールアライメント要素の1つであるトー角をご存知でしょうか。
2020年のF1でメルセデスが採用し話題を呼んだ”DASシステム”ではじめてトー角を知った方も多いと思います。
レーシングカートではセッティングポイントとしてあまりポピュラーではありませんが、トー角の変更でマシン特性を大きく変更することができます。
特にアンダーステアの解消には有効であるため、トー角の知識があることでセッティングの幅が広がります。
本記事ではトー角とはという段階からアンダーステア解消のためのトー角とその考え方をご紹介します。
また、ホイールアライメント3要素のキャスター角とキャンバー角についても本サイトでご紹介していますのであわせてご覧ください。
トー角とは
トー角とは、車を真上から見たときのタイヤ(ホイール)の角度です。
レーシングカートではフロントタイヤ(ホイール)のみ角度調整が可能です。
トー角はよく内股・ガニ股と表現され、進行方向を前にした状態で内股はトーイン、ガニ股はトーアウトと呼びます。
アンダーステア解消のためのトー角
トー角のセッティング変更はしばしばフロントのアンダーステア解消に重宝されます。
ホイールアライメントについて書かれた記事を読むと、多くの記事では”トーアウトを付ければコーナリング性能が向上する”というように書かれています。
したがって、多くの方はアンダーステア時にはトーアウトを付ければ解消すると思い込んでいるのではないでしょうか。
しかし、この考え方は正解でもあり、間違いでもあります。
トー角でアンダーステアを解消するためには、コーナーのどこのポイントでアンダーステアが発生しているかを見極めることが重要です。
それではポイント別に解説していきます。
コーナーの入口でアンダーステア
コーナーの入口でアンダーステアが発生している場合は、トーアウトが有効です。
ホイールが外側に向いているため同じハンドルの切り角の場合、コーナーに対して内側のホイールはトー角がニュートラルな状態と比較して、角度が付いています(コーナーの方向に向いている)。
したがって、コーナー入口のアンダーステアを解消できる場合があります。
トーアウトの注意点
トーアウトを付けた際の注意点は、コーナーエイペックス付近から出口にかけてアンダーステアが発生してしまう現象です。
上記で説明したように、トーアウトはホイールが外側に向いています。
ゆえに、コーナーに対して内側のホイールはコーナー方向に切れ角が付いていますが、外側のホイールは(トー角ニュートラルに対して)コーナーと反対方向に切れ角が付いています。
車はコーナリング中にコーナーに対して反対方向に傾きます。
したがって、コーナーエイペックス付近から出口にかけては、内側よりも外側のホイール切れ角が重要です。
「トーアウトで入り口のアンダーステアを解消できたけど、タイムに結びつかない」と悩んでいる方は、出口でアンダーステアが発生していないか疑う必要があります。
コーナーの出口でアンダーステア
一方、コーナーエイペックス付近から出口に発生するアンダーステアにはトーインが有効です。
コーナーに対して外側のタイヤに荷重がかかるコーナー中期から後期にかけては外側のホイールの切れ角が曲がりやすさに寄与します。
トーインは左右のタイヤが進行方向に対して内股の状態であり、コーナーに対して外側のタイヤが(トー角ニュートラルに対して)コーナー方向に切れ角が付くため、コーナー出口のアンダーステアを解消できる場合があります。
トーインの注意点
トーインを付けた際はトーアウトの際とは反対に、コーナー入口でのアンダーステアに注意しなければなりません。
その理屈は、トーアウトでご説明したとおりです。
コーナー出口でのメリットを入口で相殺していないか確認してください。
まとめ
いかがでしたか。
トー角はコーナーのアンダーステア解消に重宝します。
しかし、一般的に提言されている”アンダーステア=トーアウト”という考え方は必ずしも正解とは言えません。
アンダーステアが発生しているポイントによって付けるべきトー角が異なり、トーインもアンダーステア解消に役立ちます。
また、トーイン・トーアウトはそれぞれメリット・デメリットが存在し、トー角でタイムアップを図る場合はメリットがデメリットに勝っているか注意する必要があります。
以上のことを意識してトー角セッティングができれば、タイムアップに繋げることも可能です。
是非試してみてください。
以上、アンダーステア解消のためのトー角の解説でした。