キャブレターのセッティングはレーシングカートレースにおいて非常に重要な要素です。
一定のセットで走り続けている方も多くいらっしゃいます。
しかし、キャブレターは天候や気象状況に合わせてセッティングを変更し、最適なセットを見つける必要があります。
今回は、キャブレターの機構をあまり理解していない方やキャブセットに悩んでいる方に向けて、天候に応じたキャブセット方法をご紹介します。
キャブレターの仕事
キャブレターはエンジンの吸気時に扱うガソリンと空気の混合気を作る役割をしています。
また、アクセル開度(スロットル・バルブ開閉度)に応じて混合気に必要な燃料の割合が異なるため、燃料の比率(空燃比)を適正値に調整する役割も担っています。
気象変化と酸素量
気象変化(気温・湿度・気圧の変化)に応じて空気中の酸素量は変化します。
例えば、気温が上昇することで空気は膨張するため、酸素の割合は低くなります。
また、雨天など湿度の高い日は酸素の割合は低いです。
このように気象条件によって空気中の酸素量は変化します。
気温・湿度・気圧の高低による酸素量の変化は以下のとおりです。
高い | 低い | |
気温 | 酸素量が少ない | 酸素量が多い |
湿度 | 酸素量が少ない | 酸素量が多い |
気圧 | 酸素量が多い | 酸素量が少ない |
気象変化とキャブセット
キャブレターは、前述したようにエンジンに最もパワーの出る割合で混合気を作る役割を担っています。
キャブレターのセッティングでよく使われる”薄い”や”濃い”というワードは、混合気の燃料の割合が少ないか多いという意味です。
さらに、この“薄い”や”濃い”という現象は酸素量に依存しています。
前述で確認したように一定量の空気であっても酸素の量は変化します。
しかし、エンジンの燃焼に関わる空気中の物質は主に酸素です。
したがって、気象変化に伴った酸素量の割合に応じてキャブレターのセッティングを調整し、混合気を最適な割合に近づける必要があります。
つまり、キャブセットは常に正解が変化します。
例えば、土曜日に調子の良かったセッティングが日曜日に調子が悪くなることも考えられます。
また、山で標高の高い位置にあるサーキットと標高の低いサーキットでは、気圧が大きく異なるためキャブセットは異なります。
気象変化による空燃比は以下のとおりです。
高い | 低い | |
気温 | 濃い | 薄い |
湿度 | 濃い | 薄い |
気圧 | 薄い | 濃い |
したがって、気象変化に応じてキャブレターセッティングは下記のように調整する必要があります。
高い | 低い | |
気温 | キャブを薄くする | キャブを濃くする |
湿度 | キャブを薄くする | キャブを濃くする |
気圧 | キャブを濃くする | キャブを薄くする |
※今回キャブセットの表現で”薄い””濃い”と表現しているのは、ベースセットに対しての相対関係を強調するためです。
ある気象条件で最適なキャブセットの数値が出ていることを前提に、そこからの前後調整である必要があります。
したがって、湿度が高いから薄いキャブセットにするのではなく、ベースセットよりも薄いセットにするという点に注意してください。
まとめ
いかがでしたか。
なぜキャブレターセッティングが一定ではいけないか理解していただけたかと思います。
カートでは、上位ランカーほど走行中やセッションごとにキャブを調整し、適正値を探っているように思えます。
キャブセットに悩んでいた方や、知識不足だった方がこの記事で考え方がクリアになれば幸いです。
以上、気象変化に応じたキャブレターセッティングのご紹介でした。