減速比・変速比とは?なぜスプロケットの丁数変更で特性が変わるのか

セッティング

普段レーシングカートのセッティングで私たちは当然のことのようにスプロケットを変更します。

歯数の大小でどのような特性変化が起こるか知っていれば、自分の求めるセッティングに変更することができます。

しかし、なぜ加速が良くなったり、最高速度に変化が現れるのでしょうか。

それは変速比や減速比というものが関係しています。

今回はこの変速比や減速比を解説しながらスプロケットの歯数変更による特性変化のメカニズムをご紹介します。

なお、スプロケットって何?という方や歯数の大小でどのような特性変化があるか分からない方は下記記事を一読してから本記事を参照していただくことをおすすめします。

変速比と減速比

スプロケットやギアは異なる歯数の歯車を用いることで、動力源の力を2倍、3倍と大きくしたり、回転数を増やしたりする役割を担っています。

この関係性を表したのが変速比です。

変速比は回されているギア(ドリブンスプロケット)が1周する間に回しているギア(ドライブスプロケット)が何回転しているかを表した比率です。

一方、減速比はタイヤの回転数に対する回しているギアが何回転しているかを表す比率です。

なお、レーシングカートの場合は、ドリブンスプロケット≒タイヤの外径であり、話をシンプルにするために今回は変速比のみを用いて解説していきます。

変速比の求め方

変速比は前述したように回されているギアの回転と回しているギアの回転の比率です。

よって、変速比の計算式は

回されているギアの歯数÷回しているギアの歯数

になります。

したがって、ドライブスプロケット10T、ドリブンスプロケット80Tの場合は”変速比8″ということになります。

つまり、これはドリブンスプロケットが1周する間にドライブスプロケットが8周していることになります。

変速比と特性変化の関係

この変速比の計算が分かると、次第に特性変化との関係が見えてきます。

ここで、もう1度スプロケットの歯数変更による特性変化を確認します。

加速最高速度
ドライブ大遅い速い
ドライブ小速い遅い
ドリブン大速い遅い
ドリブン小遅い速い

上記はスプロケットの歯数変更による特性変化です。

これだけ見ると、ドライブの大小とドリブンの大小では特性が真逆のため、混乱してしまいます。

しかし、両スプロケットの関係性が割り算で求められる変速比であることを理解すると、割る数と割られる数の関係から理屈が分かります。

つまり、変速比の数値が高いほど加速重視であり、数値が低いほど最高速度重視ということです。

徐々に頭が整理出来てきたと思います。

なぜ特性変化が生まれるのか

ここからは本題のスプロケットの丁数変化でなぜ特性変化が生まれるのかを解説していきます。

仕事の原理

まず仕事の原理を理解する必要があります。

物体を動かすとき、物体を動かす力は物体に”仕事”をします。

この仕事の大きさは、物体に加えた力と力を加えた向きに進んだ距離に関係するため、式は以下のとおりです。

仕事の大きさ=物体に加えた力×物体が進んだ距離

また、動滑車を利用して重い物体を持ち上げることを想像していただきたいのですが、動滑車を利用すると力を分散させ、少ない力で物体を持ち上げることができます。

上記の画像のようなシーンでは力を1/2にすることが可能です。

しかし、同時に動滑車に繋がれた線を引く量は、2倍になってしまいます。

したがって前述の計算式に当てはめると、仕事の大きさ自体は変わっていないことが分かります。

これが“仕事の原理”です。

スプロケットにおける仕事の原理

スプロケットにおいても仕事の原理が働きます。

画像はイメージ。歯数は関係ありません。

ドライブスプロケット10Tを一定とし、ドリブンスプロケット80TのAと40TのBがあります。

変速比はそれぞれAが8、Bが4です。

つまり、Aはドリブン1周させるのにドライブが8周回転する必要があります。

一方BはAに対して1/2の4周の回転でドリブンが1周します。

これだけ聞くとBの方が圧倒的に有利であるような気がします。

画像はイメージ

しかし、Aは軸を回そうとする力がBに対して2倍の大きさがあります。

要するに、AはBに対してドリブンの回転が1/2回転減った代わりに、回転力が2倍になるという仕事の原理が働いています。

仕事の大きさの式に当てはめると、AはBに対して加える力が2倍であるのに対して進んだ距離が1/2倍になるということです。

これは、自転車でペダルを漕ぐ時を想像すれば理解できますが、ドリブンを大きくする(ドライブを小さくする、変速比を高くする)ほどペダルが軽くなります。

しかし、ドリブンが小さいときに対して沢山ペダルを漕がなくてはなりません。

このように回そうとする力と回転数はトレードオフの関係にあり、変速比を高くするほど回そうとする力が強くなる代わりに回転が減るという性質があります。

スプロケットと梃子の原理

この性質は梃子の原理でも説明することができます。

ドリブンスプロケットの回転軸(カートであればリアシャフト)を支点、スプロケットの歯を力点とします。

すると、スプロケットの歯数を大きくするほど支点との距離が離れるため、より小さな力で仕事ができます。

したがって、スプロケットの変更で回転の重さが変化するのは、梃子の原理の力点の位置の変化が発生しているからです。

おさらい

いかがでしたか。

普段何気なくセッティング変更をしているスプロケットですが、科学的根拠に基づいたメカニズムがあることが分かりました。

本記事の内容をおさらいすると、

・スプロケットの歯数による特性変化は変速比によって生まれる。

・変速比が高いほど加速重視になり、低いほど最高速度重視になる。

・変速比を高くすると、回転する力が増す代わりに回転数が減る。

・変速比を低くすると、回転する力が減る代わりに回転数が増える。

です。

今回得た知識が直接ドライビングの速さに影響するわけではありませんが、何気ないことをロジカルに考えていくことはセッティングにおいて重要です。

また、今回の考え方を持ちいたスプロケットセッティングの計算式もご紹介しておりますので是非ご参照ください。

以上、スプロケット歯数変更による特性変化のメカニズムの解説

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